久代 紀之(Kushiro Noriyuki)
東京大学大学院工学系研究科システム量子専攻 大澤研究室
社会人学生です。 趣味は重い読書(内容でなく文字どうり分厚い本が好き)と軽い運動(ヨット、アウトドア、エアロビなど)、それに スポーツ(ラグビー、サッカー、柔道)観戦と音楽演奏(リコーダとビオラ:ぜんぜん弾いてないけど)です。
会社での専門分野は、システム分析、通信プロトコル、ヒューマンインタフェースですが、最近は、人間とのミュニケーション手法に興味を持ち、大学院では、チャンス発見手法をベースとする要求獲得手法や要求を生かすデザインプロセスの研究に取り組んでいます。
製品やシステムの開発には、いろいろな困難がつきまといます。“この製品設計やシステム開発にかかわるさまざまな困難をチャンス発見の手法をベースに解決していこう”というのが大きな研究のコンセプトです。
現在は以下の研究に取り組んでいます。
製品やシステムに対して、ユーザの真の要求をどのように獲得したらよいのか?
l システム開発や製品のコンセプト作りおいて、ステークホルダが”何がほしいか”という知識の獲得は重要です。ただ、この知識を獲得するのは本当に難しい作業です。
l 理由として、下記が想定されます。
1. ステークホルダは、要求を必ずしも明示的に意識していないこと。また意識していたとしてもこれを言葉で表すことが難しいこと。
2. 要求の分析者が、ステークホルダの背景知識がわからず、ステークホルダの要求を正しく理解できないこと。
3. 多様なステークホルダが存在しており、ステークホルダ間の要求の調停・統合化が難しいこと。
l これら3つの課題を踏まえ、次の特徴を持つ要求獲得手法を開発しています。
1. 要求知識(要求そのものと、要求の目的、実現手段)とその暗黙的な前提を明示化するヒアリング手法
2. ステークホルダ毎のばらばらな要求をチャンス発見の2重螺旋モデルに基づく統合化プロセス
l これらの手法を実際のシステム開発に適用し、ユーザの要求が効率的に獲得できることを確認しました。成果は、下記の学会、ジャーナルで発表(予定を含む)しています。
要求会議をどのように運営したら創造的な会議にできるのか?
l システムや製品の要求を把握するための重要な手段として、要求会議があります。要求会議とは、下記3つの獲得を目的として実施されます。
1. 要求の獲得(誰が、何を、どの程度)
2. 要求の矛盾・相反の把握
3. 合意の形成
l
現状の要求会議の80%は、ステークホルダ間の前提の調整や紛争の調停に費やされる(K.Wiegers
03)時間いわれいます。このため、非常に効率が悪く、この会議から獲得される要求やアイデアも創造性の低いものとなっています。これら会議の効率と創造性を高めるために下記のような研究を行っています。
1. 要求会議コミュニケーション制御手法(創造性を引き出すコミュニケーション手法)
2. 参加者の前提条件の調整手法
3. 会議品質(合意形成の状況、創造性の状況)のビジュアライズ手法
1.
2. 獲得した要求を、どうやって具体的な製品やシステムに落とし込んでいくのか? l
たとえばHMI(Human
Interface)の設計の例にとると、一般的には、要求分析⇒機能設計⇒画面設計という手順で設計が具体化されます。 l
しかし、各設計フェーズ間には、下記に示すような大きなギャップがあり、このギャップにより、いわゆるシステム工学的なトップダウン開発ができず大きな手戻りによる設計効率低下と、設計情報の漏れによる設計品質低下が発生します。 l
ギャップとは、本研究では、下記の2つを想定します。 1.
要求分析⇒システム機能設計には、機能上の要求とともに、コストや耐用年数、操作性など多様で相互に矛盾する非機能要求があり、これをどのように調停して具体的なアーキテクチャに落としていくかというギャップ 2.
また、機能設計⇒画面設計には、文章で記載されたシステム仕様から、絵や音を中心とするGUI設計というモダリティの変換というギャップ l
ギャップ間では、主体となる技術者(例えば、要求分析者、システム設計者、プログラム実装者、HMI専門家、コスメティックデザイナー等)が交替することが普通であり、これら技術者間のコミュニケーションギャップも、効率や品質の低下の大きな要因のひとつになります。 l
これらを解決するために、現在下記から構成されるデザインフレームを開発しています。 1.
ドメイン分析に基づく共通機能スキーマ 2.
文章オントロジーに基づく構造化デザインルール
この他にも、消費者行動のシステム工学的分析とかラグビーのフォーメーションの数理的な分析とかの研究をやっています。特に、スポーツの研究は、とても研究していて爽やかなので機会を見つけて深めていきたいと思っています。 このあたりについてもおいおい記載していきます。 Last updated at 2005.12.23