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6/26, 2020: Webページ公開
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本件は「異分野データ連携とコミュニケーション支援によって、目的に応じたデータ設計・収集・共有と意思決定プロセスを支援」を目的とする提言及び方法論の提案である。新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威により、実社会の様々な産業が影響を受け、システム間の綻びが顕在化してきている。この未曾有の危機であるCOVID-19現象の理解と対策のため、分野を横断したデータ流通・データ共有の重要性が理解されることとなった。実際、Johns Hopkins Universityでは、アメリカ疾病対策予防センター、WHO、中国当局のデータを用い、COVID-19の拡散の様子を可視化している。また、東京都などの自治体や企業ではデータ公開、GitHubを用いてデータと技術の共有と情報発信に努めている。
しかし、今回新たに問題となったのは、データの信頼性と質である。言うまでもなく、未知の事象の理解と制御には、分野を横断したデータ共有と連携が不可欠である。このような大規模データに注目が集まるが、取得意図や背景が不明確であることが多く、事実の把握とそれに基づく的確な意思決定には十分とは言い難い。特にCOVID-19では、統計学者のNate Silver氏は“the number of reported COVID-19 cases is not a very useful indicator of anything––unless you also know something about how tests are being conducted.”と述べ、検査方法(しいてはデータ取得方法)への理解をせずに統計データを見ることに警鐘を鳴らしている。
データ資源の再利用はコスト削減の観点から重要であるが、データには潜在的にデータ取得者の設計意図が反映されている。設計意図を考慮せず、データのみを分析するのでは、誤った事実を認識してしまう危険性がある。対象とするデータを、誰が・どのような目的で・どのように取得したのか、という情報を共有し、データの品質を定量化する仕組みが必要である。さらに、ビッグデータ、センサの高度化、知識共有基盤の整備により、高い精度・粒度のデータが取得・共有可能となったが、未だデータ化されていない事象を如何に観測するのかという方法論と技術は未整備である。
提案者らは、分野を横断したデータ活用のワークショップ技法Innovators Marketplace on Data Jackets、データ検索システムDJストア、データ設計支援システムVariable Quest、データマッチングシステムTEEDAを開発してきた。データのみならず、データの出自や観測方法を共有するプラットフォームを提供し、データ設計の方法論を集合知化するが可能となる。本提案では、これらの技術を実社会に供することにより、目的に応じたデータ設計・収集・共有と意思決定プロセス支援を行うと同時に、来たるデータ社会に貢献していく。
本提案は私たちだけで実社会で実現できるものではなく、COVID-19に対して取り組んでいらっしゃるすべての方々との協力が必要不可欠です。ご興味・ご関心のある方は、ぜひ担当の早矢仕(hayashi [at] sys.t.u-tokyo.ac.jp)までご連絡ください。
また、本提案は東京大学大学院工学系研究科の「ポストコロナ社会の未来構想シンポジウム」にて提案・発表したものになります。本シンポジウム主催の工学系研究科 学術戦略室の皆様、ならびに共催の社会連携・産学協創推進室の皆様にはこの場をお借りし、感謝申し上げます。
Proposal
Figures
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