大澤幸生 研究室
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製品デザイン・開発の手法

ひとつの企業の製品同士というのは、該当業種の市場全体の中からすれば近いコンセプトで作られていることがわかります。 しかし、そのコンセプトは広告からは直接見えないこともわかります。企業内のデザイナー・開発者たちが共有する、 外から見えにくい空気のような意識を組織が共有することは意外に難しく、広報担当者や経営者まで届かないこと があります。 Researchページの二枚の写真(下に再掲)にも見られるように、デザイナーの思いを可視化した場合はその企業独自の コンセプトが赤ノード(低頻度だが重要とみられる語)で見られましたが、Webページに出てくる広報文面にこれら のコンセプトは現れず、結果として、購入者から見ると各ブランドのイメージというものがはっきりしなくなっています。
ブランドイメージを外に出すと売れるかどうか、という議論とは別に、デザイナーや開発者と企画・営業・広報部隊など 考えのギャップは現在、企業の至る所で問題になっています。あなたがデザイナーの立場だったとしたら、自分の思いが 伝わらない組織にいて満足に創造活動にいそしむことができるでしょうか? 逆に、あなたが経営者の立場だったら、 意味不明のものばかり出してくる開発者をクビにしたくなりませんか? 大澤の調査によれば、このような食い違いは 組織の開発力を蝕む原因の一つになります。以下は、製品開発から販売までを射程に入れた企業や開発部における、 チャンス発見手法の研究・適用事例です。

事例1

大澤研究室の博士課程学生である 堀江が対象としたのは、ある企業の開発部門でした。複雑なフィルム検査機械を製作しており、部品が多様なので ソフトウェア、光学機器、照明器具、コントローラなど、異なる専門知を持つ多様な開発者やデザイナーを統括する のが部門リーダの仕事でした。しかし、製品を使うユーザもまた技術者であることから、開発部門とその顧客との 意見交換は技術者同士の、外から見ると意味のわかりにくい言葉でのやりとりとなっていました。

堀江の提案により彼らは、顧客とのやりとりを記録した業務報告書を集めてキーグラフで可視化し、特に イメージのつかみにくい「スジ」「ムラ」などフィルムの傷を表す語に、該当する傷を負ったフィルムの写真( 左図) をはり込んだシナリオマップ(右図)を作成しました。この図を見ながら新製品開発戦略を立てることにより、 彼らはいくつもの特許申請、新製品開発とその業績向上を得ることができました。これは、チャンス発見の二重螺旋 プロセスに従った綿密なプランと、テキストマイニングの結果である図に写真を張り込む技術の効果に支援された成果 であったことを堀江は発表しています。

※各画像はクリックすると拡大されます。

事例2

博士課程の久代(ひさよちゃんではなく、くしろたんです)は、多階層ヒアリング法という、 新しい要求獲得技法を編み出し、その効果をホームコントローラやWebページのデザインで立証しました。 この手法では下の左図のように、開発される技術のユーザと、開発者ら、そして司会が 同じテーブルについて、司会が参加者たちに
どんな目的を満たしたいか。そのメリットとデメリットは?
そのためにどんな技術が欲しいか。 そのメリットとデメリットは?
その技術をどうやって実現するか。 そのメリットとデメリットは?
と質問をしてゆきます。このプロセス(実際にはもう少し複雑なのですが詳細はメールでお問い合わせ下さい) の中で、本当に現状の技術を改善しなければならないことが何であるかが明らかになっていきます。その過程では、 下の 右図のように「プリミティブ」と呼ばれる基本的な要求が数珠繋ぎに新しい要求を形成してゆくという ことが分かっています。このようにして目的から手段、そしてその一段一段におけるチャンスとリスクを 明示化することにより、ユーザの要求に的確に対応したプロダクトを実現しています。 ・・・簡単なようでいて難しいことを、ひとつひとつクリアしています。
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